薄毛のメカニズム

AGAとヘアサイクルの関係とは?

AGAは男性ホルモンが原因でヘアサイクルに乱れが生じることで抜け毛・薄毛が進行していく脱毛症といわれています。それだけに対策にはこの毛髪が生えてくるサイクルをどう保つか、改善させることができるかが重要なテーマと考えられており、正しい知識の元での日常のケアが求められます。

AGA(男性型脱毛症)とは?

男性型脱毛症とも呼ばれるこの脱毛症は男性に見られる典型的な薄毛の症状といわれています。よく男性の抜け毛は遺伝的・体質的な部分が大きく対策が難しい、一度症状がはじまってしまったらもう止めることはできないといわれていますが、医療の進化もあって現在では治療による改善も十分に可能になっています。なお、男性型脱毛症といわれていますが、近年では女性でも同じメカニズムで発祥するケースが増えており、「FAGA(女性男性型脱毛症)と呼ばれています。

AGAの実態と問題を探る

男性の薄毛の典型的な症状と言われているわけですが、実際のところどれだけの人がこの脱毛症に悩まされているのか?薄毛はひとりで悩みを抱え込んで自分だけで対策を行っている人も多く、また途中で諦めて対策を辞めてしまうケースもあるため正確な実態を把握するのは難しい面もあります。実際に治療を受けている人の数は2010年現在で4200人ほどというデータもありますが、もちろん実際に4200人しかこの脱毛症を抱えていないというわけではありません。
あくまで推定の話になりますが、男性の10パーセント近くがこの症状を抱えているとのデータもあります。そうなると600万人近くが該当するわけで、決して少なくない数といえるでしょう。
ただ一方でこの男性型脱毛症が必ずしも男性の薄毛の主原因とは限らないという説もあり、薄毛の悩みを抱えている男性の4割程度にとどまるとの見解もあります。このように具体的な実態が把握しづらい面もあるわけですが、少なくとも国内に数百万人は悩みを抱えていると考えて問題はないでしょう。
にもかかわらず実際にクリニックで治療を受けているのが数千人程度という点が適切な対策が行われていない実態をうかがわせています。

AGAはどうやって進行していくのか?その種類について

まず第1段階(Ⅰ)。生え際から進行していきます。それが第2段階(Ⅱ、Ⅱa、Ⅱvertex)になると頭皮全体で抜け毛が増加し、頭頂部がとくに薄くなる「O字型脱毛」、額の両端が薄くなる「N字型脱毛」など見た目の違いが出てきます。
第3段階(Ⅲ、Ⅲa、Ⅲvertex)では薄くなった生え際と頭頂部がつながりはじめてかなり広い範囲で薄い状態が目立つようになります。この時期からAGAと診断されることが多くなります。第4段階(Ⅳ、Ⅳa)になると頭皮が見える範囲が広くなり、第5段階(Ⅴ、Ⅴa)では生え際と頭頂部が完全につながり、第6段階(Ⅵ)、第7段階(Ⅶ)ではほぼ全域に薄毛が広がり、O字型、M字型の区別がつかない状態になってしまいます。
AGAの治療を行う場合には第4段階までの段階で開始すると効果が得られやすいといいます。

男性ホルモンが抜け毛をもたらすメカニズムについて

この男性型脱毛症の直接の原因は男性ホルモンだと考えられています。性欲が強い人や毛深い人は薄毛になりやすいとよく言われますが、それも男性ホルモンの分泌が活発だからです。男性ホルモンそのものが薄毛をもたらすわけではなく、そのうちの一種類、テストステロンと呼ばれる種類が深く関与しています。
このテストステロンが分泌されると体内で5αリダクターゼという酵素の働きによってジヒドロテストステロン(DHT)というホルモンへと変換されます。このDHTが男性ホルモン受容体と呼ばれる組織に取り込まれることで毛髪が作られるメカニズムを阻害してしまい、ヘアサイクルを乱してしまうのです。
ヘアサイクルとは毛髪が作られはじめてから抜けていくまでの「髪の毛の一生」とも言うべきメカニズムのことです。毛髪の寿命は2~6年程度で、その大半は成長を続けていますが、やがてそれが止まるとしばらくの休止期間を経たのちに抜けていくことになります。ですから毛髪がしっかり成長していれば問題ないのですが、寿命が短くなってすぐに抜けてしまうようになると次に生えてくる毛髪が間に合わずにどんどん薄くなってしまうです。さらには新しい毛髪が作られるメカニズムさえうまく機能しなくなり、本格的な脱毛症へと発展してしまいます。
男性ホルモンを巡るこのメカニズムはそんなヘアサイクルに介入することで毛髪の健全な成長を邪魔してしまうのです。

ヘアサイクルとは?

ヘアサイクルとは毛髪の寿命のことで、3段階に分けられます。毛髪の寿命は健康な状態で2~6年ほどといわれていますが、その大半(2~5年)を占めるのが成長期。この時期にどんどん毛髪が伸びて成長していきます。それが過ぎると2~3週間ほどの退行期に入り、最後に成長が完全に止まる2~3月ほどの休止期を経て抜けていくのです。DHTはこのヘアサイクルに影響を及ぼすことで成長期を短くしてしまい、毛髪の寿命を短くすることで抜け毛と薄毛を進行させてしまうのが問題なのです。

ジヒドテストステロン(DHT)に注意!

すっかり悪役のイメージがこびりついてしまっているジヒドロテストステロン(DHT)ですが、毛髪に悪影響を及ぼすだけのホルモンではありません。これもれっきとした男性ホルモンの一種であり、「男性らしさ」を保つために非常に重要な役割を担っています。成長期には男性器の発達を促し、また胎児の段階では性を決める(つまり男の子になる)うえで重要な役割を担っているのです。
ただ大人になると薄毛のほか、前立腺肥大、ニキビといったさまざまな悩みの原因になってしまうことが多く、どうしても厄介者扱いされてしまう傾向が見られます。

医師はこの脱毛症をどう見ている?

この男性型脱毛症は医療機関・クリニックで治療が行われる機会も増えており、フィナステリドなど効果の高い治療薬も用いられています。ただ医師の立場からするとあまり薬に頼った対策ではなく、日常生活の中でうまくケアしていくのが理想的です。内服薬には副作用がありますし、日常生活の中で原因を抱えていると効果も十分に得られないからです。
まずヘアサイクルとは何か?をよく考えた上で頭皮の健康を心がけること。育毛剤・育毛シャンプーの使用もよいですが、睡眠環境の改善やストレスの解消など心身の健康状態のケアも欠かせません。
それから男性ホルモンや5αリダクターゼを防ぐための対策。たとえば亜鉛やイソフラボンといった食事で摂取できる成分には5αリダクターゼを抑制する働きがありますし、適度な運動はストレス解消に加えて血行を促す働きもあります。ただ筋トレなどハードなトレーニングをやりすぎるとテストステロンが増加してしまうので注意したいところです。あとは喫煙や過度なアルコールの摂取など血行を阻害してしまう習慣は避けましょう。
こうした基本的なポイントを踏まえ、ヘアサイクルの改善を行っていく過程で内服薬などを用いながら男性型脱毛症の対策を行っていくことになります。

自宅でも十分ケアできます

そうなると医師の元で治療を受ける場合でも自宅ケアがとても重要なポイントとなります。育毛剤・育毛シャンプーの使用では自分の頭皮の状態を踏まえながら適切な製品を選んでみましょう。血行が悪そうならイチョウ葉エキスをはじめとした血行促進効果を持つ成分、男性ホルモンを抑制したいならノコギリヤシエキス、頭皮が荒れている場合には保湿成分などがオススメです。
あとはストレス解消や乱れた生活環境・食生活の改善などを心がけましょう。

遺伝が原因と諦めずに!

どうしても遺伝的な要素が指摘されることが多い男性型脱毛症ですが、だからといって対策を行っても効果が期待できないというわけではありません。また研究も日々進歩しており医療機関では効果的な治療も行われています。薄毛が進行してしまった場合でも諦めずにいろいろな選択肢を検討し、自分にピッタリの対策を行っていきましょう。