薄毛のメカニズム

AGAの治療効果に関わってくる薬についての情報

AGAは遺伝、生活習慣などさまざまな要因によって発症します。遺伝についてはどうしようもありませんが、頭髪を元の状態に戻すために生活習慣の改善は欠かせません。しかし、食生活や運動のみで失った毛髪が元に戻るわけではなく、自然な形での改善は非常に困難です。生活習慣を整えることは非常に重要ではありますが、実際には薄毛を改善するために薬を使用するのが一般的です。昔は薄毛に対して使用できる薬もほとんどなく、改善は極めて厳しい状態でしたが、近年薄毛の治療薬はますます一般的になっています。そのため、AGAによる薄毛の改善のためにクリニックで診察を受けるなら、まずは薬によるアプローチが基本なので、どのような薬があるかを知っておくのは重要です。

AGA治療薬と有効成分

およそ10種類ほどの薬があるので選択肢は豊富ですが、これはジェネリックも含めての数字なので、実際に薄毛を改善してくれる有効成分はそう多くはありません。また、全てが日本でAGAの薬として認められているわけではないので、ある程度は選択肢が限られます。
プロペシアは有効成分のフィナステリドを含む治療薬で、日本でもよく使用されている有名な薬です。薄毛に大きく関わっているのが男性ホルモンのジヒドロテストステロンですが、フィナステリドはこのジヒドロテストステロンを生み出す5αリダクターゼの働きを阻害する働きがあります。フィナステリドの主な仕事は、5αリダクターゼの働きを抑えて薄毛の進行を食い止めることですが、直接的に毛髪を増やす効果はありません。そのため、フィナステリドを配合した薬のみで毛髪が生えてくるケースは少なく、生活習慣の改善など他のアプローチも欠かせません。
同じく、フィナステリドを主成分としているのがインドで開発されたフィンペシアですが、こちらはジェネリックではありません。効果がプロペシアと似ているのに価格が安く人気がありますが、偽物が多く出回っているのが難点です。サワイ、ファイザー、トーワなどプロペシアのジェネリックもすでに世の中に出回っているので、薬にかかる費用を抑えるならこれらのジェネリックを利用するのがよいでしょう。
発毛剤のリアップに含まれていることでも知られている成分がミノキシジルで、こちらは元々は血圧の薬として開発されました。副作用の1つとして発毛が見られたことから、今や血圧の薬ではなく薄毛の薬としてよく知られています。ミノキシジルを使った薬は外用薬、内服薬があり、外用薬として有名なのはアメリカ発のロゲインです。このロゲインはリアップの元になったことでも知られている薬です。内服薬の形で出回っているのがミノキシジルタブレットですが、こちらは薄毛の薬としては認可されていないのでリスクがあります。
フィナステリド、ミノキシジルに続く有効成分がデュタステリドであり、こちらを配合しているのがザガーロです。2016年に販売開始された後発の薬ではあるものの、日本での認可も受けているので安心して使えます。メカニズムはフィナステリドと似ていて、5αリダクターゼの働きを阻害することで発毛を促すのですが、フィナステリドが1型の5αリダクターゼの働きを阻害するだけなのに対して、デュタステリドは1型と2型の5αリダクターゼ両方を抑えられるのです。そのため、発毛効果ではフィナステリドを上回っているものの、フィナステリドより副作用が強いのが難点で、男性機能の低下などの深刻な副作用も確認されています。
他に、各クリニックがオリジナルの薬を手がけていることもありますが、これはフィナステリドやミノキシジルといった有効成分に栄養素を加えたものです。どのような成分が含まれているかはクリニックで詳しく尋ねるしかありませんが、配合されている有効成分に準じた扱いをする必要があります。

使用タイミングは重要なポイント

どの薬を使用するかによって飲み方も大きく変わりますが、使用するタイミングは相当に重要なポイントです。まず、プロペシアなどのフィナステリドを配合している薬ですが、こちらはどのタイミングであっても効果は変わりません。胃を守るなどの理由で食後に飲むタイプの薬が多いですが、フィナステリドを配合している薬なら自由に時間を選べます。
プロペシアの場合、1日1回1錠を服用する形なので、飲み忘れさえ避ければいつでも大丈夫です。ただ、飲むタイミングを決めていない場合、飲み忘れる恐れがあるので、朝食後や夕食後など必ず飲むタイミングを決めてしっかりと守るようにしてください。もちろん、主治医の先生から明確に薬を飲むタイミングを指示された場合は、それにしたがって飲む必要があります。
ミノキシジルの場合、認可されている外用薬の方を利用するしかありませんが、こちらは朝と夜の2回が基本です。服用するわけではないので食事のタイミングもまったく関係ありませんが、当然ながら頭皮に汚れが溜まっているならしっかり浸透してくれません。そのため、1日の汚れが溜まっている夜はシャンプーが欠かせず、しっかりとドライヤーで乾かしてからミノキシジル配合の外用薬を使用してください。
デュタステリドが配合されているザガーロは、先に書いたように体への作用がフィナステリドと似ていますが、飲むタイミングについても同様に似ています。ザガーロも1日1回1錠、食前や食後などの制約もないので、飲み忘れにさえ注意すれば特に問題はありません。
残るは各クリニック独自の薬ですが、これらはそれぞれのクリニックの指示にしたがってもらうしかありません。基本的にはフィナステリドやミノキシジルのように、ベースになった有効成分と同じ扱いではありますが、中にはフィナステリドとミノキシジルを組み合わせた薬も存在します。そのような薬の場合、そのクリニックでない限り使用する適切なタイミングは分かりません。いずれにせよ、クリニックオリジナルの治療薬を利用するなら、飲むタイミングや飲む回数は必ず厳守してください。

使用期間はどれくらいか

治療薬を使ってどれくらいの期間で改善されるのか、薄毛に悩んでいる人からすればこれは特に気になるポイントです。当然ながら治療が長引けばどんどん費用もかさみますし、通院の手間などの負担もかかります。しかし、体質や生活習慣、それに薬の効き具合にもよるので、どれくらいで改善されるかは一概には言えません。ただ、クリニックで本格的に改善を図る場合、半年から1年程度で大きく改善されるケースが多いので、この半年から1年を目安として考えてください。ただ、必ずしもこの期間内に毛髪の状態が改善されるとは限らず、特に注意したいのは先に書いたような薬の飲み忘れです。
フィナステリドやデュタステリドといった5αリダクターゼの働きを抑える薬の場合、薄毛を進行させるジヒドロテストステロンの働きを間接的に抑制できます。ただ、この抑制はあくまで薬を飲んでいるからこそ起きる現象なので、飲み忘れにより再びジヒドロテストステロンが活発になるケースも珍しくはありません。薄毛の改善の実感が伴うまでには相当に時間がかかるので、薬を飲んでもまるで改善されない現状に苛立ち、服用を自己判断でストップする、こんなケースは多くあります。1回の飲み忘れで全てが台無しになるわけではありませんが、それでも飲み忘れが続けば意志の方が揺らいできてもおかしくはないので、必ず飲み続けるようにしてください。
ミノキシジルはフィナステリドやデュタステリドとは働きが大きく異なりますが、こちらも継続が必要です。血流をよくすることで発毛を促すのがミノキシジルの働きなので、やはり毎日欠かさず使用することが重要です。各クリニックのオリジナルの薬を利用する場合も、使用期間が大きく変わるわけではありません。やはり、飲み忘れなどのないように、1日のどのタイミングで使うかをはっきり決めておくのがポイントです。飲み忘れ、使い忘れがあった場合、薬を飲む期間がさらに伸びたり、最悪の場合は半年から1年ほどが経過してもまるで結果が出ないなんてことも十分にあり得ます。
結果が出なかった場合、クリニックに通うのを止めてしまう、新たなクリニックを探す、渋々ながらクリニックに通い続けるなどの選択肢が出てきますが、いずれも特にメリットはありません。挫折すれば今まで費やしたお金はムダですし、クリニックに通い続けるにしてもムダなお金が発生します。保険適用の病気に伴う薄毛なら保険も使えるのですが、そうでないなら保険は使えず、薬代だけでもかなりのお金がかかるのが実情です。時間ばかりが経過するようでは経済的な負担が大きくのしかかるので、このような事態にならないためにも薬はしっかりと決められたルールを守って使用してください。

薬の副作用について

どのような薬であっても必ず存在するのが副作用で、これは薬である以上は避けられません。サロンパスのような気軽に使える薬でも、漢方薬であっても副作用は存在しており、薄毛の治療に使われる薬も同様です。基本的に、薬は長期的に使用するほど体への負担がかかるので、体を休めるためにも早期に結果を出したいところです。薬の代謝に大きく関わっているのは肝臓なので、お酒をよく飲むなどの理由で肝臓が弱っている人は、やや不安が残ります。もっとも、実際には特に副作用を感じないまま過ごせるケースが圧倒的に多く、そこまで心配する必要はありません。
薄毛改善のための薬を使った場合の副作用は、フィナステリドだとまず肝機能障害が挙げられますが、これは先に書いたように肝臓で代謝をする都合上、多くの薬で見られる副作用です。フィナステリドの副作用の中で怖いのは勃起障害や性欲低下などの男性機能の低下、それにうつのような精神的な症状です。どちらも、副作用が出るケースは1%程度と非常に低いものの、長期的に症状が出るなら今後の人生に多大なる影響を及ぼしかねません。フィナステリドと似た働きをするデュタステリドの場合、副作用もフィナステリドと似ています。肝機能障害や男性機能の低下はデュタステリドでも出る可能性がありますが、先に書いたようにフィナステリドと比べるとやや副作用は強めですので、使用するなら先生としっかり相談して、もし体に異常を感じたのなら必ずクリニックに連絡してください。
ミノキシジルの場合も肝機能障害の恐れはあり、他にはアナフィラキシー反応、難聴などの深刻な副作用も報告されているものの、どれも確率は非常に低く、やはりそこまで気にする必要はありません。ミノキシジルの場合は外用薬として頭皮に使うので、肌に関する副作用が多く報告されています。痒みや発疹はミノキシジルの薬を使った場合にかなりの確率で起こり、これは血管拡張作用が原因です。先に書いたようにミノキシジルは元々は血圧の薬として用いられており、血管に作用する働きがあります。この影響で頭皮の痒みや発疹が引き起こされるのですが、外用薬として使う限りは血圧の問題はほぼありません。
そして、各クリニックのオリジナルの薬に関しては、ベースにしている有効成分によって副作用が変わってきます。どのような副作用が見られるのかはクリニックでないと分かりませんから、薬を使う前に必ず副作用の詳細について尋ねてください。薄毛以外の症状を抱えていて通院している、あるいは何かしらの処方薬を服用している場合、薄毛の改善のための薬は使えない場合もあるので、カウンセリング時には必ずお薬手帳を持っていき先生の判断を仰ぎましょう。

海外からの個人輸入は安全か

基本的には、クリニックに通って薬を処方してもらうのですが、一応は別ルートもあります。薬の個人輸入について知っている、あるいは耳にしたことがある人も多いはずですが、薄毛の薬も個人輸入で入手可能です。病院で処方される薬は、人体にどのような影響を及ぼすのかしっかりとデータを取った上で認可されています。それに対して、日本では認可されていない薬の場合、安全性に対してやや疑問が残るのは事実です。データがあったとしても、それは海外でのデータであり、日本人が使用して同様の安全性が見込めるとは限りません。
さらに、すでに何かしらの薬を使用している場合、海外から輸入した薬と飲み合わせていいのか分からないのも不安なところです。一定の安全性が確保されている市販薬同士であっても、同時に服用してはいけない組み合わせもあるので、飲み合わせは非常に厄介な問題です。EDの薬として有名なバイアグラも、承認前に個人輸入で仕入れた人が飲み合わせの問題で亡くなる事故が相次ぎ、イメージを大きく損なったという事例があります。クリニックで処方してもらうなら薬のプロである先生が判断してくれるのですが、個人輸入の場合はそうはいきません。
このように、薬自体の安全性がはっきりしていないのも問題なのですが、さらに薬自体が本物かどうかという問題もあります。個人輸入だと、外見を似せただけでの偽物の薬が出回っていることも多く、これを見抜くのはほぼ不可能です。偽物の薬の場合、果たして成分が何なのかまったく分からないので、ある意味では認可されていない薬よりもリスクがあります。個人輸入を扱っているショップはインターネット上に多くあり、大抵の場合は信頼性を売りにしているのですが、本当に正規の薬が販売されているかは利用者からは分かりません。
このように、海外でのみ認可されている薬を個人輸入して手に入れる方法は非常に危険性が高いのですが、それでも個人輸入に手を出す人が多いのは安いからです。薄毛の薬は保険が適用されないのでかなり割高であり、ジェネリックであってもそれなりに負担がのしかかります。ある程度の長期間の通院が必要な薄毛の場合、経済的な負担が原因で通院を止めてしまう人もそれなりに多く、安価で薄毛を改善できるかもしれない個人輸入の薬は魅力的に映るものです。しかし、個人輸入の薬は健康面で多大なる被害を出す恐れがあるので、安くても利用するのは避けた方が無難です。保険が適用されない以上は金銭面での負担はネックですが、それでも安全性を重視するならクリニックに行って、正規の薬を処方してもらう必要があります。

どうやって問題を乗り切るか

AGAによる薄毛を改善する場合のネックは色々ありますが、長期間の通院、副作用、そして金銭面での問題、この3つは非常に大きな問題です。いずれも挫折に繋がりかねない厄介な要素ではありますが、薄毛を改善するならこの問題を乗り越えなければいけません。副作用については実際に薬を飲んでみないとはっきりしたところは分かりませんが、長期間の通院や金銭面での問題は事前の対策も可能です。薄毛を改善してからの姿を想像するなど、通院のモチベーションを保ち続ける方法は有効です。1年ほどの長期間の通院に耐えられるか、貴重な貯金を切り崩してでも薄毛を改善したいか、このように自分自身としっかり向き合ってからクリニックに訪れるとよいでしょう。